バラコラム

最新品種紹介 コラム第三回目 オリュンポス12神 第2の女神 「アルテミス」

バラコラム

(バラ担当:大川原)

私が会社に入社した頃、バラの育種に詳しい上司からこんなことを言われました。
上司「カッティング・ローズ(切花品種)には素晴らしい白バラはたくさんあるが、ガーデン・ローズ(戸外で咲かせるバラ)に優秀な白バラがほとんどないのはなぜだか知っているかい?」
大川原「・・・・・???えーと。もしかして、花びらの問題でしょうか?」
上司「よく解かっているね。バラの花びらは、とても繊細で、薄く、直射日光や風、または、雨などですぐに花びらが傷んでしまうんだ。」
上司「その中でも白バラは、特に花の傷みが激しくてね。ガーデン・ローズとして良いバラは本当に少ないんだよ。」
大川原「花の色によって、花びらの傷み方が違うのですか?」
上司「私も全部のバラを見たわけではないからハッキリとは言えないが、ピンク・オレンジ・イエローの系統は傷みが少ないのだが、白と赤黒は花弁がとても傷みやすいんだよ」
上司「特に白は、傷みやすいうえに、花弁にピンクのカビが目立つようにつくんだよ」
大川原「か・・・カビですか・・・・」
上司「そう、これが、そのカビだよ。」
そう言って、私の前にカビの出たバラを見せてくれました。
そのバラは、とても花が大きな白いバラで、なんともいえない素晴らしい香りがありました。
しかし、花びらには「ピンクのまだら模様のカビ」がビッシリとついており、とても綺麗とはいえないような状態でした。
その、育種に詳しい上司は
「雨風や直射日光が強く当たるところでも、花弁が傷まない白バラの育種は私にとっても夢だよ」
と言っていました。
これは、今から18年前の話ですが、私にとっては、白いバラを見るたびに、いつも、その会話のやりとりを思い出します。
しかし、そんなバラの世界も、ここ数年で大きく変わってきています。
近年、発表された白いバラは、花びらにできる「ピンクのまだら模様のカビ」がとても少ない品種が多くなりました。

2005年発表のつるバラ大輪「ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサール
 

2006年発表の四季咲き中輪「コスモス
 

2008年発表の四季咲き大輪「ヨハネパウロ2世
 

2009年発表の四季咲き大輪「ボレロ
 
いずれも、花びらにカビが出にくい優秀なバラたちです。
そして、今回、2012年の新品種の白いバラに抜擢されたのが「アルテミス」です。
 
このアルテミスは、前回紹介したバラ「ノヴァーリス」同様、白バラの最強健品種です。
冒頭で紹介した「ピンクのまだら模様のカビ」が非常に発生しにくく、とても病気に強い白バラです。
今年の春、京成バラ園の庭園で、お手洗いの横にひっそりと咲いているアルテミスに気づいた方はいたでしょうか?
バラの手前で大きくなったサルビア・ガラニチカの奥に埋もれ、日が当たらない悲惨な状態にあわされていたアルテミスでしたが、そんな悪環境の中でも、病気の葉はほとんど無く、とてもよい状態で育っていました。
 
枝は長く伸びますので、つるバラとしても使えますし、がっちりした太い幹枝のため、冬に短く切って、木バラとして楽しむことも可能なバラです。
私にとっては、京成バラ園で取り扱っているバラの中で、アルテミスに似た花がないことが、とても嬉しい限りです。
ぜひ、皆さんもこのバラの魅力あふれる表情を楽しんで育ててみてはいかがでしょうか。

最後に「女神アルテミス」について、お話いたします。
ギリシャ神話に登場するアルテミスは「月の女神」と呼ばれる一方で「狩猟の神」とも呼ばれていました。
現在、ルーブル美術館にあるアルテミス像は、鹿と一緒に歩みをそろえ、背中に矢を携え、矢を取ろうと背中に手を伸ばしている石像でした。
しかし、この像には、いくら探しても弓がありません。
「なぜ、背中の矢筒に矢を入れているのに弓がどこにもないのだろうか?」
これについて、さらに調べていくと、アルテミスは月の中でも三日月に関係が深い神と言う話も見つけました。
もしかしたら、女神アルテミスは三日月を弓にして矢を放ち、森の秩序を守っていた女神様だったのではないでしょうか。

アルテミスは京成バラ園芸ではギリシャ神話2人目の女神です。
※ちなみに1人目の女神は「アフロディーテ」となります。
(アフロディーテのバラコラムはこちらへ)